橋本病


【橋本病】(慢性甲状腺炎)


1.橋本病とは?
 橋本策が初めてドイツの医学雑誌に「Struma Lymphomatosa」(リンパ球性甲状腺腫)として報告したので橋本病の名前が付いています。慢性甲状腺炎とも呼ばれ名前のごとく慢性的に甲状腺に炎症が続いてしまい甲状腺機能が低下してくる病気です。橋本病とバセドウ病は代表的な自己免疫性甲状腺疾患です。バセドウ病同様自己免疫が原因ですが、バセドウ病が甲状腺刺激抗体という自己抗体の刺激により甲状腺機能亢進症になるのに対し、橋本病は甲状腺が浸潤したリンパ球(白血球の一種)により破壊され甲状腺機能低下症になってしまう病気です。

 

2.橋本病の症状
 橋本病では通常甲状腺が全体的に腫れており、びまん性甲状腺腫といわれます。稀に甲状腺の腫れがなく、逆に萎縮している場合もあります。炎症があるといっても、通常は甲状腺に痛みがあるわけではなく腫れているだけです。よく「痛くもかゆくもなかったので放っておいた」という方がおいでですが「痛みやかゆみ」などの症状がなければ問題ないとするのは間違いです。
癌などの重篤な病気でも、初期は全く無症状です。

甲状腺は体表臓器ですので、自分で気付いたり周囲の人に言われて気付いたりすることが多いのですが、放置されることが多いのはとても残念なことです。炎症がひどくなくて甲状腺機能が正常に保たれているときは、甲状腺腫以外には症状はありません。しかし、甲状腺機能が低下してきますと様々な症状が出現します。

甲状腺ホルモンは、体の代謝を司り体中のほぼすべての細胞が必要としていますので、欠乏すると体全体の働きが低下してきます。甲状腺機能低下症の症状を以下にまとめてみました。


●臓器症状としては全身だるい、疲れやすい、むくみ、低体温、寒さに弱い
●頸部びまん性甲状腺腫、異物感
●脳・神経意欲減退、眠気、思考力低下、反射遅延、昏睡

●循環器徐脈、心不全
●消化器便秘、食欲不振、肝機能障害
●筋肉・皮膚筋力低下、脱毛、乾燥肌、むくみ
●生殖器月経異常


上記のように症状はいわゆる不定愁訴的なものが多く見逃されたり、別の病気と間違われやすいのですが、逆にこれらの症状があると全てを甲状腺の病気と考えてしまうのは間違いです。
先にも述べましたが、甲状腺ホルモンが正常なら症状は甲状腺の病気のためではありません。他の病気を考えるべきです。橋本病と診断されても甲状腺機能は正常な方が多いのです。繰り返しますが甲状腺機能が正常なら腫れがあっても心配要りません。

 

3.橋本病の検査
橋本病の診断には甲状腺自己抗体が陽性かどうかを調べる必要があります。
抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の2つを調べます。
ほとんどの橋本病の人はこれらの自己抗体が陽性ですが、バセドウ病の人でも陽性になりますので、バセドウ病を否定しなければいけません。ただ稀には後でバセドウ病を発症してくる例があります。
自己抗体が陰性の人でも甲状腺穿刺吸引細胞診でリンパ球浸潤を認めれば確定されます。エコーでもびまん性甲状腺腫と甲状腺内の低エコー領域を認めます。
甲状腺機能(FT3・FT4・TSH)は正常の人が多いですが低下症になっている例もあります。時々無痛性甲状腺炎を起こすことがあります。甲状腺が突然破壊され血中甲状腺ホルモンが上昇します。これは壊れた甲状腺からホルモンが漏れ出ているので一過性のものです。ホルモンが作れなくなるため、機能低下症になりますが、徐々に回復し正常化します。産後に起こることが多いですが、出産とは無関係に起こる場合も稀ではありません。バセドウ病とよく間違われますが、バセドウ病と異なり通常甲状腺刺激抗体は陰性です。また、稀に悪性リンパ腫という悪性腫瘍を合併する例がありますが、エコー、穿刺吸引細胞診や難しい例では試験切除が必要な場合もあります。

 

4.橋本病の治療
橋本病は特定疾患に指定されていますがいわゆる難病ではありません。甲状腺機能が正常なら特に治療は不要です。甲状腺機能低下症に対しては、甲状腺ホルモン(チラーヂンS)を投与します。甲状腺腫が大きく小さくしたい時にも甲状腺ホルモンを投与しますが、すぐに縮小するわけではありません。

 

ヨウ素を摂りすぎないようにしながら、足りなくなった甲状腺ホルモンを補って、体温を維持するために電子負荷療法をご活用ください。

 

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