歯周病(歯槽膿漏)

 

歯周病
 歯周病(歯槽膿漏 / 辺緑性歯周炎)は「静かなる病気」と呼ばれるほど自覚症状がほとんど感じられない病気で、気づいたときには歯を支えている骨(歯槽骨)が溶かされてボロボロになり、重症になっているケースも少なくありません。

 
 
 
 
 
 
 
 

歯周病(歯槽膿漏)は大きく分けて、歯肉炎と歯周炎にわけられます。

日本人の場合、歯肉炎は10~20代前半で、すでに50%。50歳代でおおよそ80%以上の人がかかっているといわれている怖い病気です。歯周病の予防や進行を止めるには、早期発見・早期治療が大事です。

歯周病が恐ろしいのは、かなり進行するまで目立った症状や痛みを伴わないことです。自分では歯ブラシを十分して大丈夫だと思っていても、腫れる、痛いなどの自覚症状がないために気がつかないまま、個人の抵抗力にもよりますが、知らず知らずに20年30年と長い間に徐々に悪化 しながら、本人の自覚がないままに歯周組織が壊されていきます。 

ある程度悪化してから、体調が悪い時にうずいたり歯茎からの出血で気になる程度です。それから噛めない、腫れる、歯が動く、隙間ができた、歯並びが変わったなど、ご自分で歯周病だと気がついた時にはかなり悪化している場合が少なくありません。
程度の差はありますが、全世界の人口のおよそ7割の人々が歯周病に罹患しているといわれています。


歯科定期検診は少なくとも半年に一度は必要です。

 


1) 歯肉炎と歯周病のちがいは 

 歯肉炎は歯ぐきが赤っぽくなり、腫れはじめ、少しかゆいような、浮いたような、痛いような感覚があり、歯磨きなどの際に少し出血を伴い、口臭がします。歯肉に炎症がある状態です。

歯周炎は歯肉炎の症状より深刻で、冷水や甘いものがしみたり、歯根が見えてきたり、歯に動揺がでてきたり、歯並びが変わってきたり、食べ物を噛むと痛みがでてきます。これらは歯槽骨が破壊(歯を支える顎の骨が吸収された)されている状態です。

歯ぐきが腫れたときは急性歯槽膿瘍といいまして、細菌や抵抗力の低下などによって炎症がおこり、一度に歯周組織の破壊が起きている時です。



2) 歯周病ってなに 
 歯周病とは歯を支える組織(セメント質、歯根膜と顎の骨)が壊されている病状を言います。
もう少し詳しく説明しますと、歯周病(歯周疾患)の原因は約70%が細菌。血球、剥離上皮細胞、残渣物で構成される歯垢や歯石が歯周ポケットに存在し、過咬合によって起こる歯の動揺は歯肉溝の拡大と細菌の篏入により歯周ポケットを形成する。

また、硬固物咀嚼をくり返すことによる歯根のヒビやハウシップ窩の形成は歯周ポケットに潜む細菌の細胞膜であるLPSや細菌によって産生されるコラゲナーゼ、ヒアルノニダーゼ、コンドロイチナーゼなどの組織溶解物質による組織浸襲が原因で、歯の根の周りから歯を支えている歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質で構成される歯周組織に波及し、やがては免疫応答が破綻して組織抵抗力を失い、歯周組織がどんどん壊されていく症状をいいます。
言い換えますと、咬むことによって歯を支えている組織が細菌等の産生物や自己蛋白異常により壊されて、その歯の周りの骨がどんどん壊されていく場合があります。
そうすると、歯が動いてきます。動いてきた時は歯を支える歯槽骨は1/3以上が破壊されていますから、相当に壊されたと考えられます。

また、急性で歯ぐきが腫れたときに気付く場合も多いようです。

 


歯周病の原因は
健康な歯と歯肉はしっかりとつながっていて、その部分にもともと歯肉溝と呼ばれる隙間があります。これがさらに深まり、歯周ポケットという状態になります。この歯周ポケットの中でバイ菌の巣であるプラーク(歯垢)や歯石中の細菌が繁殖して毒素をだすので、歯を支える組織(歯肉・セメント質・歯根膜と顎の骨)が壊され歯周病は悪化していきます。

ブラッシング効率(歯や歯ぐきを磨いているけど磨き残しが多い)が悪ければ,厳密にはわずか3日で歯肉炎に1週間もあれば立派な歯周病になりますので、定期検診が必要です。

 

老化に伴って歯周病が急速に起こる原因

老化によってある次期から歯肉や歯根膜を攻撃するインターロイキン(IL)1β,IL6,IL8やプロスタグランディング(PG)E2、歯槽骨を溶かす自己免疫疾患もあらわれる場合があります。病原菌への感受性が鈍り、炎症が治らず、歯が少なくなるために更に悪化させる悪循環がおこります。

  歯牙喪失に伴う咬合指示域の減少による
残存歯への負担過重
免疫応答性の低下と歯周組織の老化
歯 肉 歯周病原菌の感染対する応答変化は
個体差による
歯周病原菌の感染対する応答変化は著しい
歯根膜 咬合圧に対する影響は大きい 咬合圧に対する影響は大きい
歯槽骨 骨芽細胞の細胞基質成分の変化による
骨形成能への影響は大きい
骨芽細胞の細胞基質成分の変化による骨形成能
への影響は大きい

 

 

歯周病の要因は

過咬合 噛み締め、片側咬み、硬固物をよく食べることで歯根にヒビなどの
損傷を与える。
歯周ポケットの拡炎による細菌侵入 ブラッシング効率が悪い、過咬合
異常習癖

つまようじ(ツースピック類)、不良なブラッシング、歯間ブラシの

間違った使い方などにより歯肉の傷から炎症が広がる

舌運動の異常 嚥下異常、舌の自浄性不良により特定部に食物の貯留
自己蛋白異常や自己免疫疾患 ある時期から炎症を起こすサイトカインなどの補体系を自己放出する
生活習慣病 糖尿病、高血圧、腎臓障害、肝疾患、心臓疾患、脳疾患など

 

歯周病の要因の中で日本人に最も多く、歯周病の外科処置をしても進行を止められないことが多いので、つまようじの使用は控えましょう。

また、不良なブラッシング、歯間ブラシの間違った使い方などにより歯肉の傷から炎症が広がったり、出血が人工歯石になって歯周病を悪化していきます。


歯周病の危険因子は

局所因子 全身因子
歯の形態
歯列のなかの歯の位置(歯根の近接)
歯周病組織の形態
咬合関係(咬合の異常や咬習癖)
歯科医原性の治療
唾液腺の状態
口呼吸
プラーク中の病原菌
口腔衛生の状態(コンプライアンス)
遺伝的疾患
内科的疾患(糖尿病など)
ウイルス性疾患
ホルモンの分泌異常
精神的ストレス
喫煙、多量の飲酒
食生活の影響
薬剤の服用による副作用
加齢(防御機構の減弱)

 

最も歯周病を急激に併発する事項として歯根の微小なヒビがあります。
これには一般に外傷性咬合とよばれ、過度な咬合力で歯根の表面にヒビが入ったり、セメント質が微小に破壊される(ハウシップ窩の形成)
などにより歯根膜が貧血や感染により再生能力が乏しくなって歯周病が急激に進行してしまう場合があります。

例えば、若い頃から いりこ を毎日食べている人でも、60歳を過ぎると歯は割れてきますので、「歯の硬さには限界があり、咬む力は衰えませんので、咬む力が勝ったり、咬む方向が異なったときに歯根は割れる」ようです。歯周病の人は、硬いものは注意が必要です。


歯根にヒビや破折をおこしやすい硬固物の種類 
・豆類:油で揚げた豆、ピーナツ、アーモンドなど
・タネ類:梅干しのタネ、ひまわりのタネ、トウモロコシのタネ
・乾燥食品:乾燥バナナ、ビーフジャッキー、スルメ等
・氷、アイスキャンディー丸かじり、冷凍カズノコなど
・アメ、カタパン
・キャラメル
・ガムをよく噛んでいる
・鳥の軟骨


そのほかに歯根のヒビや破折につながる行為 
・カニ等の殻を歯で噛みちぎる
・ビンの栓を歯でこじ開ける
・朝起きたら歯が痛い・・・くいしばり、歯ぎしりを寝ている間におこなう。 

 

タバコは歯周病の危険因子のひとつ

 喫煙者は歯の喪失が早くおとずれる。喫煙者は喪失数が多い。

 

 

糖尿病は歯周病の危険因子のひとつ。有病者は歯の喪失が早い。

糖尿病は歯肉炎→歯周病の悪化で歯の喪失が早くおとずれる。 有病者は歯周病による喪失数が多い。高血圧、糖尿病、心臓疾患、腎臓疾患、甲状腺機能障害など。また、カルシウム拮抗剤、血液抗凝固剤、抗てんかん剤の服用も歯周病になりやすい。

 

骨粗鬆症は危険因子のひとつで,歯の喪失が早い

骨粗鬆症は女性に多く、もともと男性の80%位しかない骨の密度が、閉経後、80歳までに最大40%に低下する。このため全身の骨が弱くなり、腰骨や大腿骨の骨折をおこすことがある。歯は早期に抜ける場合が多い。

 


 Q&A 

歯周病の原因
 

歯周病は必ずかかる病気なのでしょうか?

 歯周病は必ずかかるわけではありません。歯周病の多くは、原因であるプラークや歯石を日頃の歯磨きや、定期的な歯科検診などを受けることにより除去することで予防することができます。予防できない歯周病もありますが、遺伝性の病気など、非常に特殊な場合です。

歯周病の原因はプラークと聞きましたが、プラークって何でしょうか?

 プラークとは、歯に付着している白、または黄白色の粘着性の沈着物で、非常に多くの細菌とその産生物から構成されています。またプラークはバイオフィルムとも呼ばれていて強固に歯に付着してるだけでなく、薬品だけでは除去しにくい状態になっています。そのためにしっかりと歯ブラシ等で除去することが大切になります。

全身の病気と歯周病の関係について教えてください。

 歯肉は体の中でも非常に敏感な組織です。またお口の中は全身の中でも微生物、細菌などが最も多く存在している場所でもあります。そしてあらゆる全身 疾患と歯周病の関連性が近年の研究により指摘され始めています。歯周病との関連を挙げられているものには呼吸器系疾患、心疾患、糖尿病や妊娠などがありますが、なかでも糖尿病との関連は深く糖尿病は歯周病を悪化させる大きな原因のひとつでもあるのです。

他の病気が原因で歯周病になることがあるのでしょうか?

 あります。遺伝性の病気、血液の病気(白血病など)、皮膚の病気、降圧剤を含めた特定の薬によって歯肉を含めた歯の周囲組織に症状が出ることがあります。またホルモンの分泌の増減、糖尿病、喫煙などによって歯周病が治癒しにくくなるといった事があります。

歯周病が他の病気を引き起こすことがあるのでしょうか?

 重症の歯周病になり、口の中に歯周病を引き起こしている細菌が多くなると、血液や呼吸器内に入り込み、心筋梗塞・動脈硬化症・肺炎・早産などを引き起こしやすくします。

歯周病にどうして煙草が悪いのですか?

 喫煙が悪い理由はいくつかあります。

1.喫煙する人は統計的に喫煙しない人よりも歯周病にかかりやすいというデータがあること。

2.タバコに含まれる化学物質が歯肉からの出血を抑えたり、歯肉を硬くすることで症状が気づきにくくなること。

3.喫煙者は末梢血への影響があるので、歯周病の治り方が悪くなること。

です。つまり煙草は歯周病になりやすくするばかりでなく、気付き難くし、また治り難くする原因と言えるのです。

お酒が好きですが、お酒は(歯周病に)悪いのですか?

 お酒そのものが歯周病に悪い訳ではありませんが、多くの場合お酒を飲んだ後は歯を磨かずに寝てしまう、又は歯磨きを疎かにしてしまう事が多い事から、歯周病を進行させる原因の一つと言えるかもしれません。

歯周病にかかりやすさはあるのでしょうか?

 あります。大きく分けて口の中の状態と全身状態によります。前者は歯並びや歯周病菌の種類や粘膜の形が影響しますし、後者は生活習慣(喫煙など)やそれに関する病気(糖尿病など)、遺伝的影響など、色々な要素が関わって歯周病にかかりやすくなるのです。
また、遺伝子診断、免疫応答・炎症反応の検査により歯周病にかかりやすい患者さんがいると報告されています。特に通常は40歳前後に症状があらわれる歯周病が10歳代後半からあらわれる早期発症型と呼ばれる歯周病がこれにあたります。

歯周病のかかりやすさに男女差はありますか?

 妊娠されている女性は口腔内に分泌されるホルモンの影響で歯肉の炎症が起こりやすくなっています。また閉経前後には歯肉の上皮が剥がれ落ちてしまうことによる歯肉の炎症(慢性剥離性歯肉炎)が起こりやすくなる言われています。

虫歯にかかりやすい食べ物はあるのですが、歯周病にかかりやすい食べ物はあるのでしょうか?

 歯周病の一番の原因は歯に付着するプラークです。プラークを形成しやすい食べ物としては粘着性の高い食べ物があります。また、糖分が高い食べ物もプラークを形成する細菌の活動を助ける原因となります。

歯周病は遺伝するのでしょうか?

 歯周病そのものが遺伝するということはありません。しかしながら、非常に少ない例ですが、遺伝性要因があるとされる歯肉の増殖特殊な歯周病があります。また、近年、遺伝子診断により、本当に遺伝的になりやすい人、なりにくい人がいるかどうか科学的に解明されつつあります。

母親が歯周病にかかっていると子供にうつりますか?

 乳幼児のお口の中に、もともと居なかった種類の細菌が母親からうつることはありますが、歯周病の原因は主にいくつもの細菌が集まってできたプラークです。したがって歯磨きが行き届いていればお子様にうつることはありません。

一生懸命歯ブラシをしても歯周病にかかってしまうのでしょうか?

 歯周病を予防するには歯の表面や歯と歯の間、歯と歯肉の境など、かなり行き届いた歯磨きが必要です。本人は充分磨けていると思っていても、実際には歯ブラシだけでは不充分な事がよくあります。
そのために、歯科医師や歯科衛生士による各個人に合った歯ブラシと補助的な清掃用具(フロス・歯間ブラシ等)による歯磨き指導を受ける事をおすすめします。

歯ぐきが人よりも前に出て幅広いのですがそれが歯周病のかかりやすさに関係ありますか?

 歯ぐき(歯肉)が前に出ていると、乾燥しやすくなり、歯周病になりやすい条件となります。
また歯肉(歯ぐき)が幅広いから歯周病にかかりやすいということはありません。むしろ幅広い歯肉は歯ブラシしやすくなると言えます。

口呼吸は(歯周病に)悪いのですか?

 はい。口呼吸することにより口の中が乾きやすくなり、プラークが溜まりやすくなります。また唾液による自浄作用がなくなることから口の中の細菌の活動性を高めるなど、悪影響があります。

永久歯が出てくるときに歯ぐきが腫れたようになるのですが大丈夫でしょうか?

 永久歯が生えて来る時、既に生えている永久歯の反対側の歯肉やその周りに炎症が起こる事がよくあります。腫れた状態が長く続くようでしたら、お近くの歯医者さんに相談される事をおすすめします。

歯ぎしりが歯周病の原因になるのでしょうか?

 歯ぎしりが直接歯周病の原因となることはありません。
しかしながら、強い力が歯に加わることで、歯の根やその周囲の骨組織に負担をかけ、骨を特定部分のみ吸収させたりします。

噛み合わせが悪いと歯周病の原因になるのでしょうか?

 噛み合わせが悪いことにより、一部の歯に不自然な強い力が加わり、歯ぎしりと同様に、歯周病の症状を悪化させる原因になる場合があります。

 

歯周病の症状

 

歯ブラシのときに出血したり、しなかったりするのですが、どうしてですか?

 歯肉に炎症が起きていると食物や歯ブラシ程度の刺激でも歯肉から出血しやすくなります。ただ、炎症の進行やその日の全身の健康状態などにより必ず出血するとは限りません。歯磨きのとき一度でも出血したことに気づいたならば、早めの受診をおすすめします。

朝起きたときに歯ぐきに違和感があるのですが、どうしてでしょうか?

 夜寝ている間は、唾液が流れずお口の中が乾きやすくなります。お口の中が乾くと細菌の活動性が高くなります。つまり寝ている間は歯肉にとって危険な時間といえるでしょう。おやすみ前の歯磨きは特に気を付けましょう。また、寝ている間に歯ぎしりしていて歯と歯ぐき(歯肉)に負担があったのかもしれません。

歯ぐきがはれたような気がするのですが、しばらくすると治ります。でもその繰り返しでだんだん歯が動いてきたりするような気がするのですがなぜでしょうか?

 歯ぐき(歯肉)がはれたのは炎症があるためです。その症状は多くの場合慢性で、自覚症状がないまま進行します。ただ、全身的な免疫力が弱まったときなどに痛みや違和感といった自覚症状として現われやすくなります。
歯周病の進行に伴って歯を支えていた骨(歯槽骨)が徐々に吸収されますから、歯の動きも大きくなります。たとえ今はれが治っていても、歯周病が治った訳ではありません。早めに受診しましょう。

体調が悪くなる度に歯ぐきが腫れるのですがなぜでしょうか?

 歯肉は体の中でも非常に敏感な部分です。歯肉に慢性の(緩やかに進行している)炎症があるところは、体調を崩したときに症状が出ることがよくあります。ですから、自覚症状がなくても早めに治療を受けることをお奨めするのです。

歯の根の部分の歯ぐきが腫れているのですが、これも歯周病でしょうか?

 これは根尖膿瘍という、う蝕が原因からできるものです。ただし、歯の周囲から進行する歯周病が歯根の先まで達すると同じような症状が出る場合があります。

しっかり磨いていて、歯ぐきも赤くないのに歯の根の部分の歯ぐきが赤くはれてきたのですが、どうしてでしょうか?

 何らかの理由でお口の中のごく一部分に限局した炎症が起きているか、あるいは歯の神経が死んでしまって根の先に膿が溜まっている可能性があります。早めに受診しましょう。

歯ぐきの色が黒ずんでいて気になります。放っておいても大丈夫でしょうか?

 歯肉には、皮膚と同じでメラニン色素が沈着しています。個人差はありますが黒いから不健康ということはありません。この他に煙草などの嗜好品により後天的につく場合もありますが、煙草による害は全身的にはもちろん歯周病にも大きな危険原因です。

よく、ポケットが深くなったと聞きますが、ポケットとはどんな状態でしょうか?

 まず、歯と歯肉の間には健康な場合、約1mmの溝があります。これを歯肉溝と言います。
歯肉や歯周組織に炎症が起こると、歯肉が腫れることによって歯肉溝が深くなります。これを仮性ポケットと言い、歯肉炎という状態をあらわします。
さらに歯と歯肉が付着している部分が根の先の方へ移動していきます。これを
歯周ポケットといいます。移動した距離をアタッチメントロスといい、この距離で歯周病の重症度を判定します。

口臭がひどいと自分では思うのですが、家族はそれほど言いません。なぜでしょうか?

 口臭にはお口の中の衛生状態の悪さからくるもの、内臓疾患によるもの以外に精神的なものがあります。実際には臭わないのに本人が臭うと思い込んでしまう場合です。いずれの臭いにせよ、御家族が貴方の臭いを気になさっているかどうか確認してはいかがでしょうか。

口臭があると家族に指摘されたので、一生懸命歯ブラシをしていますが、あまり変わりません。どうしたらいいのでしょうか?

 自分では充分な歯磨きだと思っていても、実際には隅々まで行き届いていないことはよくあります。口臭は歯周病が進行した場合、歯周ポケットの中にい る歯周病原性細菌が原因であることが多くあります。深い歯周ポケットには歯ブラシが届きませんので、早めに受診して、御本人の届かない部分の清掃をしてもらいましょう。

歯ぐきが下がって根が出てきたのですが、どうしてでしょうか?

 歯肉や歯を支えている骨は、加齢に伴い少しずつ下がってくるのが自然です。しかし誤った歯磨き習慣や歯周病により病的に下がる場合もあります。

歯のまわりに白くうっすらと膿の様なものが出るようになりました。どうしてでしょうか。またどうしたら良いでしょうか?

 膿のように見えていても、プラークであることがあります。
重症の歯周病になると、歯周ポケットが深くなり、歯の神経が死んでいて根っこの治療も必要になっている可能性があります。このような症状であれば家庭療法でなおすことは無理なので、早めに歯科医院で治療を受けましょう。

 

歯周病の予防

 

歯周病は何歳くらいから気をつければよいのでしょうか?

 歯周病の原因は歯の磨き残しから歯に付着するプラーク(プラークバイオフィルム)と呼ばれるものです。よって日々その原因が蓄積されますから、歯が生えた時点から注意する必要があります。一般的な歯周病は40歳前後に発症する場合が多いです。

予防のために歯科医院に通うメリットはどんなものがありますか?

 虫歯や歯周病を初期の段階で発見しやすくなるため治療にかかる時間とお金が節約できます。また問題が何も見つからなかった場合でも、個人に応じたブラッシング指導を受けたり歯のクリーニングなどが受けられます。

歯ブラシは電動と普通の歯ブラシはどちらが歯周病にかかった歯には良いのでしょうか?

 一概にはいえませんが、電動歯ブラシだけでお口の中を隅々まで磨くのは難しいですし、長期に使用することにより歯が余分に磨り減ってしまう可能性があります。むしろ普通の歯ブラシで歯を磨き、電動歯ブラシは歯肉のマッサージ用くらいにお考え頂いた方がいいでしょう。

歯ブラシだけのブラッシングでは不十分だといわれたのですが、本当でしょうか?

 個人差はありますが、確かに普通の歯ブラシだけでは磨ききれない場所は出てきます。たとえば歯と歯の間などがそうでしょう。このような場所には歯間ブラシやデンタルフロスといった補助的な道具が必要になります。

ブラッシングは食後すぐにしなければいけないのでしょうか?忙しいので毎食後すぐにブラッシングできないのですが。

 確かに食事の後は、口腔内細菌の活動性が高まるので歯磨きするのが理想的です。しかし、不充分な歯磨きを一日三回毎食後にするよりは、夜お休み前の一回だけでもしっかり時間をかけて丁寧に行き届いた歯磨きをした方が効果的です。

爪楊枝で食後に歯の間の汚れを取るのは良いのでしょうか?

 爪楊枝で取るのは歯の間の食べ物の滓(かす)程度とお考えになるとよいでしょう。爪楊枝は先端が尖っているので、歯肉を傷つけることも考えられます ので注意して使用することをおすすめします。爪楊枝はあくまで補助的な道具ですから、歯ブラシでしっかり時間をかけて歯磨きするのには及びません。

歯磨剤は、何が良いのでしょうか?

 炎症を引かせる薬効成分などが入っているものもありますが、基本的には歯磨剤の成分はどれも同じ様なものです。一番大事なのは、どの歯磨剤を使うかではなくいかに磨き残しを少なくブラッシングでプラークを除去できるかどうかになります。

歯周病の予防に歯みがき粉はどれくらい効果があるのでしょうか?

 歯周病の一番の予防法はプラークの除去そのものです。一部の歯磨き粉には殺菌作用を挙げているものもありますが、あくまでもプラークをしっかりと歯ブラシなどで除去した後の補助的なものと考えるとよいでしょう。
効能は主に歯磨き粉に含まれる研磨剤により沈着した色素を除去したり、香料により爽快感が得られるということでしょう。

うがい薬は歯周病の予防に効果がありますか?

 うがい薬だけでプラークの除去はできませんが、殺菌作用があるものが多く、うがいによる自浄効果が期待できます。ブラッシングをきちんと行ったうえでの補助的なものとお考え下さい。

塩による歯ぐきのマッサージは歯周病の予防によいのですか?

 塩は随分昔から歯磨剤として用いられてきました。確かに若干の殺菌作用や唾液分泌の効果があり、水分を吸収しますので歯肉が引き締まった感じがする かもしれません。しかし塩自体に歯肉の血液循環を良くしたり、丈夫にするといった特殊な作用はありません。粗塩ですとかえって歯肉を傷つけることがありま すので気をつけてください。

どんな歯ブラシが良いのでしょうか?

 万人に適した歯ブラシというのはありません。歯磨きの方法と同様で、個々の患者さんの歯の並びや大きさ、歯肉の状態などにより、どのような大きさ、硬さの歯ブラシが適しているかは変わってきます。歯科医師、歯科衛生士に指導を受けて下さい。

歯周病の予防に何か良いサプリメントみたいなものはありますか?

 現在お口の中の衛生状態を高める為の製品は、歯磨剤をはじめ洗口剤、電動歯ブラシや音波歯ブラシなど実に様々です。しかし結局のところお口の中のプラークを除去できなければ意味はありません。一番大事なのはしっかり行き届いた歯磨きです。

一度歯周病と検診で指摘されました。むし歯は無いと言われています。痛みもないし、食事するのに不都合もないので、歯医者さんに行く必要はないでしょうか?

 歯周病は痛みなどの自覚症状をほとんど伴いません。そして、放置すれば悪化こそすれ決して自然には治りません。気が付いた時には手遅れで何本も歯を 抜かなければならないようなことになりかねません。たとえ虫歯がなくても、痛みがなく食事するのに不都合がなくても、もし歯周病だといわれたことがあるの でしたら可能な限り早めに治療されることをおすすめします。

 

 

歯周病の自己診断をしてみましょう

歯みがきのとき、歯肉から出血はありませんか?
・歯肉の色が変わったり、腫れたり膿がでたりしてませんか?
・口臭は気になりませんか?
・1本でもグラグラする歯はありませんか?
・歯肉が下がって歯が離れてきてるような感じはありませんか?
・歯並びやかみ合わせには変化はありませんか?   

 M2 は水平動揺で、いろいろな処置や移植手術をする必要がある。
 M3 は歯が水平垂直に動き、歯を支えている組織は全て壊された(歯の死を意味します)。

 

 糖尿病で歯周病が増える理由、歯周病で血糖値が上がる理由

 

糖尿病と歯周病の相関関係

 糖尿病の人が歯周病になりやすいことは、以前からよくいわれていたことですが、両者の相関関係を明確な数字とともに示すのは、なかなか大変な面がありました。ひと口に糖尿病といっても病状に大きな幅があること(糖尿病のタイプや血糖コントロールの良し悪しなど)や、歯周病自体が罹患率の高い病気であるために、病気の進行レベルまで含めて詳しく調べないと、差を比較しにくいといった理由からです。
 

(1) 糖尿病の人は歯周病の罹患率が高い 

 糖尿病でない人に比べて糖尿病の人は、2倍強の頻度で歯周病が起きやすくなるとの報告がみられます。

(2) 糖尿病の人は歯周病がより重症化しやすい 

 糖尿病の人では歯周病の罹患範囲(歯周病の歯の本数)や、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間にできるすき間)の大きさなど、歯周病の重症度を示す値が、糖尿病でない人より高いことがわかっています。

(3) 糖尿病の罹病期間が長い人ほど、歯周病の罹患率が高い 

 糖尿病では罹病期間が長くなるほど、いろいろな合併症が起きやすくなりますが、歯周病も同じ傾向がみられます。ただしこれは、加齢の影響も少なくないと考えられます(糖尿病の罹病期間が長いということは、それだけ高齢であると考えられ、歯周病の罹患率も自然に高くなる)。

(4) 血糖コントロールがよくない人は歯周病がより重症化しやすい 

 血糖コントロールがよくない人ほど、合併症の進行が早くなりますが、歯周病も同じ傾向がみられます。

(5) 歯周病が重症化している人ほど血糖コントロールがよくない 

 進行した歯周病がある人ほど、血糖コントロールが悪化しやすく、合併症の発病率が高いという報告もあります。

(6) 歯周病の人は糖尿病の罹患率が高い 

 歯周病の人は歯周病でない人よりも、糖尿病の罹患率が約2倍高いとの報告があります。

(7) 歯周病の人は糖尿病でないとしても糖尿病予備軍であることが多い 

6)と同じ調査から、歯周病がある人は、たとえ糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないとしても、HbA1C(過去1~2カ月間の血糖値の平均を表す検査値)が高い人が多いことが示されました。つまり、「糖尿病予備軍」の頻度が高いということです。

(8) 糖尿病の人が歯周病をしっかり治療するとHbA1Cが改善する 

 慢性感染症である歯周病に対して徹底的な治療を行うと、血糖コントロールが改善することがわかってきました。それとは逆に、血糖コントロールが悪いと歯周病の治療だけ進めても、歯周病がなかなかよくならないと、従来からよくいわれています。

 

 

糖尿病と歯周病の因果関係

 このように糖尿病と歯周病に密接な相関関係があることは、ほぼ間違いありません。ただ、両者の因果関係については、すべてが明らかになったわけではありません。
例えば、糖尿病に歯周病が併発しやすいのは、血糖値が高いためなのか、それとも両者の発病に共通する生活習慣や遺伝的な背景が存在するのか、あるいは もっと別の理由からなのか、確実なところはわかっていません。今はまだ理論の段階で、その裏付けを得るために、両者の因果関係を確かめる調査研究が現在行われているところです。

 

歯周病の危険因子

 なぜ歯周病になるのか――歯周病の原因――について

ある病気にかかりやすくする要因のことを、その病気の危険因子(リスクファクター)といいます。歯周病には、大きく分けて三つの危険因子があります。

(1) 細菌因子(歯周病の原因のおおもと)

 歯周病は慢性感染症です。感染を引き起こしているのは、歯と歯や歯ぐきの間に住み着く細菌です。その細菌の塊を「プラーク」といいますが、プラークに接している歯肉は様々な刺激を受けて炎症が起こり、歯周組織を徐々に蝕んでいきます。
歯周病の起こりやすさは、プラークに住み着いている細菌の量と種類に大きく左右されます。最近では、歯周病を特に起こしやすくする細菌の種類が特定されつつあります。

(2) 宿主因子(歯周病を起こりやすくする体の状態)

 ヒトの体には、外部から体内に侵入を試みる細菌やウイルスに対し、それをシャットアウトする精巧なシステム「感染防御機構」が備わっています。ですから 細菌が住み着いたとしても、すぐに歯周病になるわけではありません。しかし、細菌に対する体の抵抗力が弱くなっていたり、口の中が細菌の活動を手助けするような状態になっていたり、歯周組織が破壊されやすい状態にあると、わずかな細菌の攻撃を防ぎ切れず、歯周病が発病・進行してしまいます。
このような、個々の患者さんが持っている歯周病の危険因子を、宿主因子(または生体因子)といいます。具体的には、加齢、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓の病気、肥満などの全身の病気や状態、遺伝的なこと、噛み合わせや歯並びがよくないことなどがあげられます。

(3) 環境因子(歯周病を起こしやすくする生活習慣)

 歯周病は生活習慣病です。生活習慣病とは、ある程度の遺伝的な素因を背景に、生活習慣の影響が加わって発病する病気のことです。
歯周病を起こしやすくする生活習慣として、喫煙や精神的なストレス、飲酒などがあります。また、糖分の多い食べ物や、やわらかい食べ物を好んで食べたり、間食回数が多いといった食習慣は、プラークをできやすくして歯周病の原因となると考えられています。

これら三つの危険因子はそれぞれが個別に歯周病を進行させますが、三つが絡み合い、互いの影響を強めるように作用することがあります。わかりやすい例をあげると「甘い食べ物を好むという環境因子が細菌因子を強めたり、宿主因子のひとつである肥満を招く」と、といった具合です。

 

 

糖尿病で歯周病が増える理由

 以上の三つの歯周病危険因子を頭の隅に置きながら、糖尿病と歯周病の相関関係を考えてみましょう。

 

糖尿病は血糖値が高くなる病気

 糖尿病は、血糖値が高くなる(高血糖になる)病気です。高血糖は口の中の環境に次のような影響を及ぼします。

 

口の中が乾燥する
 高血糖状態では、浸透圧の関係で尿がたくさん出ます。その結果、体内の水分が減少するとともに唾液の分泌量が減り、口渇(喉や口の渇き)という症状が現 れます。唾液には食べ物を消化する働きの他に、口の中を浄化したり組織を修復する働きもあり、歯周病を防ぐように作用しています。高血糖のために口の中が 乾燥している時は、その作用が低下していて、歯周病の原因菌が繁殖しやすく、歯周病が進行しやすい環境になっていると考えられます。

動物が(ヒトも含めて)怪我をした時に傷口をなめるのは、唾液による殺菌・組織修復作用を利用しているものと、推測されています。


唾液などの糖分濃度が高くなる
 口の中は唾液や歯肉からの滲出液で常に潤っています。これらの液体は、もともとは血液から作られるものです。ですから高血糖下では、唾液や滲出液の糖分の濃度が高くなります。そのような状態は、歯周病の原因菌が繁殖に適していると考えられます。

 

細菌に対する抵抗力が低下する
 状態では、細菌を貪食する好中球(白血球の中で最も数が多い顆粒球)の働きが低下することがわかっています。つまり、感染防御機構が十分に機能しなくなるということです。そのために様々な感染症にかかりやすくなり、感染症である歯周病も当然、起こりやすくなります。

 

組織の修復力が低下する
 プラークが形成された歯周組織では、細菌によって引き起こされる組織の破壊と、それを何とか修復しようとする働きのせめぎあいが続いています。高血糖(または低血糖)状態では、組織を修復する働きが低下することがわかっていて、糖尿病で歯周病の進行が早くなることには、このことが影響していると考えら れます。

 

 

たんぱく質の代謝が変化する

 糖尿病は糖の代謝(栄養素などが体内で利用され、排泄されるまでの流れ)に異常が起きる病気ですが、たんぱく質の代謝も変化します。その影響は、歯周組織内のコラーゲンの減少や性質の変化となって現れ、歯周組織の弾力性が失われ、破壊された組織の修復力も弱くなります。

さらに高血糖状態では、過剰なブドウ糖がたんぱく質と結び付いて AGE――advanced glycated endproduct.最終糖化産物。糖尿病合併症の主要原因のひとつと考えられています――という物質が作られます。歯肉組織に AGE が蓄積すると、そこに炎症を起こし、組織を傷つけ、歯周病の発病・進行を招きます。

 

脂質の代謝が変化する

 糖尿病では、脂質の代謝も変化します。そのために高脂血症――特に、中性脂肪(トリグリセリド)や LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)の増加――をしばしば併発します。最近の研究の中には、高脂血症が歯周病の危険因子である可能性を示すものもあり、両者を併発した場合の悪影響は無視できません。
 

肥満の影響

 肥満とは、余分なエネルギーが脂肪となって、体に蓄積した状態のことです。従来、体の脂肪は単にエネルギーを貯蔵するだけの存在だと考えられていたので すが、近年、脂肪細胞では様々な作用をもった物質が作られていることがわかってきました。それらのうちのいくつかは、組織に炎症を起こすように作用します。

歯周病は細菌感染によって歯周組織に慢性の炎症が起きる病気です。肥満のために脂肪組織から分泌され続ける炎症物質は、歯周組織にも影響を与えて歯周病の危険を高めることがわかっています。


Ⅱ型糖尿病の患者さんの7割前後は、現在肥満の状態であるか、過去に肥満であった時期があるといわれていますから、このこともまた「糖尿病の人に歯周病が多い」という事実に結び付いてくると考えられます。

 

合併症の影響

 糖尿病の罹病期間が長くなると、全身の血管に障害が起き、それが様々な合併症の主原因となります。特に、血管径の小さい細小血管にその影響が現れやすく、末梢組織の――歯周も末梢にあたります――血流量低下から感染を長引かせたり、組織の修復を妨げたりします。

また、糖尿病の合併症で、骨量が減少すること(骨粗鬆症)があります。歯周組織の炎症が続き歯槽骨(歯の土台の骨)が減少する病気である歯周病に、その影響が及ぶ可能性は、十分考えられます。

 

糖尿病は生活習慣病、歯周病も生活習慣病

糖尿病と歯周病は生活習慣病です。糖尿病を起こしやすくする生活習慣とは、運動不足、食べ過ぎや飲み過ぎ(特に、糖分のとり過ぎ)、精神的なストレスなどがあげられます。このうち糖分の多い食事や精神的ストレスは、歯周病を起こしやすくする生活習慣でもあります。

加えて、糖尿病の合併症を起こしやすくする生活習慣として、喫煙があげられますが、喫煙は歯周病の明らかなリスクファクターです。

 

歯周病で血糖値が上がる理由

 引き続き、歯周病が血糖値に与える影響について考えてみます。

 

細菌感染症によってインスリン抵抗性が生じる

 何度か述べましたが、歯周病は感染症です。感染症というと、通常、かぜやインフルエンザ、肺炎などのような、原因の細菌やウイルスが駆逐されるまでの一時的な病気、治療を受ければ完治する病気だと思われるかもしれません。

しかし、歯周病がこれらの感染症と違うのは、慢性感染症だということです。治療を継続していないと、歯周組織に住んでいる細菌の活動を封じ込めることができません。ときには、歯肉の毛細血管から血液中に細菌が入り込み、菌血症を起こすこともあります。

このような時、ヒトの体は様々なサイトカインを分泌して、細菌やウイルスに対抗しようとします。それらのサイトカインは、インスリン(血糖値を下げる唯 一のホルモン)の働きを阻害して「インスリン抵抗性」という状態を生じさせます。当然、血糖値はいつもより上昇してきます。健康な人ならすぐに膵臓からイ ンスリンが分泌されて血糖値が高くなり過ぎることはありませんが、糖尿病の人では血糖コントロールが乱れる大きな原因となります。


慢性感染症である歯周病を放置すると、体は常にインスリン抵抗性の状態になっていると考えられます。

 

歯周病は生活習慣病、糖尿病も生活習慣病

 歯周病と糖尿病は生活習慣病です。歯周病を起こしやすくする生活習慣とは、歯磨きがきちんとできていないことや喫煙、あるいは糖分の多いものを好んで食 べたり間食をとり過ぎるなどの食習慣、口呼吸(鼻で息をせず、口で呼吸すること)、歯ぎしりの癖、精神的ストレスなどがあげられます。このうち、食習慣や 精神的ストレスは糖尿病を起こしやすくする生活習慣でもあり、喫煙は糖尿病の合併症を起こしやすくする生活習慣です。

 

歯周病で歯を失うと…

 歯周病が進行して、歯がぐらついたり歯を失うと、固いものが食べられず、普段の食事がやわらかい食べ物中心になったり、よく噛まずに飲み込んでしまうようになります。やわらかい食べ物はプラークを蓄積しやすく、歯周病により悪影響を及ぼします。さらに、このような食事のとり方は、食後に血糖値が急激に上昇する「食後高血糖」を起こしやすくすると考えられます。

 

 

糖尿病治療と歯周病治療の相関関係 糖尿病と歯周病の治療の“輪”

 以上のように、糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼし合います。しかし、だからといって、「糖尿病のうえに歯周病の心配までしなければいけないなんて…」と、がっかりする必要はありません。糖尿病が歯周病に及ぼす悪影響の多くは、血糖値が高いこと、血糖コントロールが悪いことを介するものです。つま り、糖尿病があってもしっかりと血糖コントロールをしていれば、歯周病の起こりやすさは、糖尿病でない人とあまり差はないと考えられます。

さらに近年では、「糖尿病患者の歯周病を徹底的に治療することで、血糖コントロールが改善された」という報告がよく見られるようになってきました。糖尿病と歯周病を同時にきちんと治療していけば、必ず双方に良い影響を与え合うことは間違いありません。